個人の実存を取り戻すための「ジャニーズ・ワールド」論考

ジャニワを見てきました。というわけで久々に瞳孔開いた感じの詭弁エントリ。着地点がどこになるのか分からんけどこれは残しておかねばならん!!!!が、言うても一度しか見てないので総じて曖昧です。この舞台の本質的なところでもあるんだけど、これが「私の」ジャニーズワールドですよという点ご了承。まぁ一つの思考ゲーム的なもんですわ…。
すでにジャニワ(済)の先達たちから「ネタバレに何の意味もない」と言われていた、その全ての意味を把握した舞台でした。そんなの当たり前で、なぜならこの舞台はきっと「見て」「理解する」ものではない。1幕で山田くんも言ってましたね、「こんな現実味のない世界、誰が理解できんだよ!」。これは明らかに反語で、そもそも「理解」するためのものではないのではないんだろうな。まるで夢(比喩ではなく)のように論理性に欠けて、非現実的で、他の誰でもない「私が」「当事者として」「体験する」ことにこそ意義がある…というか、むしろそこにしか意義がない舞台。私でない「他の誰か」の客観的な「ネタバレ」に何の意味もなくて、舞台そのものの意義から翻るとそういった客観的な全てのものがナンセンスなんだよね。いわゆる第三者的な「レポート」が事実上そもそも不可能な破綻した作りになっているところが素晴らしかったです。客観視を許さないし、客観視してみたところでそれは舞台の枝葉に言及するだけで本質的なものには何も触れられない。そういった意味でこの時代、MCで誰がこう言って〜とかセトリはこうで〜とか、誰かの「レポート」で把握できてしまう現状やステージそのもの、ひいてはそれで満足してしまうオーディエンスへの強烈なアンチテーゼではなかろうか。「現場に来い、以上!」っていうね。客観的に語ることがそもそも不毛という構造それ自体、<<今この瞬間、他でもない「私」(ジャニーから見たら「貴方」)>>がこの演目を見ることが何より大事だよ!というジャニーのエンタメ哲学の真髄だと思う。まじで。「体験」しなきゃ話は始まらんし、この舞台の是非も語れんよ。当たり前だけど忘れかけていたこと。ウィトゲンシュタインも言いました、「語りえぬもの(=知らないもの)については沈黙しなければならない」と。余談。
そういった意味でシェイクスピアの10人10役じゃんけんも、キスマイガチャwも、えびさんのコントのランダム性も、「貴方が今この日この時間にここでしか見られないもの」の価値を裏付ける偶発性のギミックなんだよね。このどれもが客観的に、統計で把握できる「ローテーション」じゃないでしょ?特にシェイクスピアはじゃんけんなんてしなくてもいいじゃん。「演じるは誰誰!」とかってただただランダムにやってもいい。少なくとも開演の頃にはもう誰がやるか決まってるはずなんだしwただそれを偶然性の象徴のような「じゃんけん」に託すことによって、「今」でしか見られないもの、私が、貴方がここにいないと意味のないものっていう付加価値がついて、「同じ舞台なんてない」っていう現場の本質を際立たせてるんだよねー。もちろんどんな舞台やコンサートにも一つとして同じものはないと思うんだけど、それを誇張させているというか。公演ごとのブレを極力排除する作品もあるけど、ジャニワに限ってはそのブレを極端に誇張することによって「今ここで見ている」ことのスペシャル感を味わえる。よって昨日はこうだったから今日はこうでなくてはいけないとか、客観的な法則性で理解できないという理由でこの舞台を批判するのはナンセンスじゃないだろうか。いや分かるんだけどさ、批判する気持ちもwただ「そういうものじゃない」のひとことで論駁できるんだよ、ジャニワに関して言えば。ジャニーが演劇…っていうか現場にこだわる理由もなんとなく肌で感じた。例えばこれがDVDで出たとして、内容は確かに残されるかもしれないけど、そこから一つ上のレイヤーで見た「この舞台の意義」は伝わらんでしょう。ただただ頭のおかしい演目がそこに残るだけだと思う。w だってカメラを通してしまうことでそれはもう「私の」主観じゃないものね。実際に観劇すると「演劇」というよりもまさに「世界に放り込まれた」感が強くて。見るもの/見られるものという主客を瓦解させて「体験」させることこそが目的の舞台なのに、1枚のレンズを通すことによって主客に分離されてしまう。行けて「追体験」止まりだよねきっと。私は全然現場担じゃないんだけど、なるほどジャニーズにおける現場とは本来こういうものかっていうのがすっげーーーー分かったので行けてよかったです。内容もそうなんだけど、舞台としての本質もジャニーの思う(たぶんw)「現場」というものがだいぶ誇張されてたから、そう足しげく現場に通ってるわけじゃないボンクラこと私でも見えてくるものが多かった。
ともかく客観的に見ることが徹底的に否定されているということは各々の主観性こそが全てで、よって「ジャニーズワールドとは?」という「万人に共通する」「第三者的な」答えはない。他でもない貴方が、私が、どう見たかというものが正解でしょう。自担が出てないからクソ、演出が派手で最高、意味わからん頭おかしい、どんな感想を持ってもきっと正解です。それが各々の主観性から生み出した感想である限り。この舞台のスゴいところはそれがそのまま貴方の私の「ジャニーズそのもの」観へと翻ってくるところなんだよねー。まさに「(Yours)ジャニーズワールド」がある。こういう愛し方をしないと叩かれるとかw、誰担ならこう愛すべきとか、私はそういった昨今ありがちな主観を無視した傾向へのアンチテーゼと捉えました。これを観劇していない人が何を言おうとあまり信憑性を持たないし、観劇した人は胸に手を当てて「貴方の」ジャニーズとは何なのか考えるべきだと思う。そしてそういう「貴方の」見解を私は知りたいです。かといって主観バンザーイ客観性なんてクソだぜ〜つって何を言ってもいいってワケではないと思うんだけどw、あくまで「客観性こそ良し」という、個人を無視した平等(悪い意味でな)思想への強烈なアンチテーゼなんだよね。だからこそ、13月のユートピアは「私の」、そして「貴方の」胸にある。この結論はちょっとどっちらけではあるんだけどw演目全体に流れる一貫した思想を鑑みるとさもありなん。ちなみに私のジャニワの物語に対する感想は「過程はすごく含蓄あるものなのに、如何せん結論がどっちらけ!」でした。まぁ少なからず私のジャニーズ観と一致するw 別にジャニワに限った話じゃないけど、ジャニーズ舞台ってすごく難解なテーマを提示しておきながら最終的にズコーッなヒューマニズムに落ち着くところが大衆向けエンタテインメントよな…w 高尚になりきれない。まぁそういうところが好きっちゃ好きですが。w
さてここからが本題です。この均一化されて自我を失った人々に「個」への回帰を呼びかける、この思想こそがまさに実存主義そのものであると!!!!
サルトルの「実存は本質に先立つ」という言葉に象徴されるように、何かのために世界があるのではなく、ただ世界は無根拠にここにあって、本質を定義するのは我々だ!っていうとこがジャニワすっげー実存主義的だなああああつって感動してるわけです。サルトルあんま詳しくないからあんま突っ込んだ話はしないけど。w この辺りは実存主義の祖でもあるキルケゴールも言ってますね。ちょっと著作がないからやけに思想的項目が充実してるWikipediaから引用させて頂きますね…ちゃんとした論文じゃないから勘弁な!

彼が実存主義の先駆けないし創始者と一般的に評価されているのも、彼が一般・抽象的な概念としての人間ではなく、彼自身をはじめとする個別・具体的な事実存在としての人間を哲学の対象としていることが根底にある。

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キェルケゴールにとっては、個々の有限的な人間存在が直面するさまざまな否定性、葛藤、矛盾は、ヘーゲル的な抽象論において解決されるものではない。そのような抽象的な議論は、歴史、現実における人間の活動の外側に立ってそれを記述するときにのみ有効なのであって、歴史の内部において自らの行く末を選択し決断しなければならない現実的な主体にとっては、それは意味をなさないものなのである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB

なんかもう後者の引用でジャニワの中身的なところに関してはほぼ言い尽くされてるような気もするけどまぁいい。w
総じてセリフや世界観に思想のかけらが詰まりすぎていてもはやどこから手を付けていいものか状態なんだけどw、とりあえずニーチェとの関連をまず私は詭弁で語りたいゆえのこの展開です!
まず前提として、ニーチェの根幹思想に「永劫回帰」「肯定的ニヒリズム」「運命愛」があります。これは彼の生きた時代背景が大きな契機になってるんだけど、とりあえずそれを無視してざっくり説明すると、「同じことを繰り返すだけのこの世界は虚しい」というニヒリズム、だがしかしそれを「肯定」して「そのしょっぱい運命を愛する」ことを目指すべきだ、というものです。それは全て、「私が」実際に体験している「生」に立ち返って肯定するためのロジックなわけですね。そしてニーチェはこの生を大地になぞらえているんだけど、そこがすごく2幕と重なって面白かった。山田くんは「地に足をつけて生きていく」と宣言する、その反面彼らは宇宙に旅立っていって、最終的に地球へ帰ると。ざっくりした流れがこれを彷彿とさせたんだよなー。

 わたしはきみたちに懇願する、わたしの兄弟たちよ、あくまで大地に忠実であれ、そして、きみたちにもろもろの超地上的な希望について話す者たちの言葉を信ずるな! 彼らがそれと知ろうが知るまいが、彼らは毒害者なのだ。
 彼らは生を軽蔑する者である、死滅していく者、そして自身毒害された者である。大地はそういう者たちに倦んでいる。だから彼らは去り行くがよいのだ!
 かつては神を冒涜することが最大の冒涜であった。しかし神は死んだ。そして、それとともに、これらの冒涜者もまた死んだ。大地を冒涜することが、いまでは最も恐るべきことである。そして探究しがたいものの内臓を、大地の意味よりも、より高く評価することが!
ツァラトゥストラ』第一部/序説第三章

時代背景なんかを無視して言葉尻だけで転用することは愚かしいという自覚はあるぞ!ただこれが私の頭ん中では綺麗に結びついてしまいましたよという話です。ざっくり言うとこうやって大地讃頌=生の肯定を説いて、最終的には運命愛を身につけた「超人」を目指すというのがニーチェの根幹思想なんだけど、皮肉なことにニーチェは街角で狂って死んでいるんですね。なんかもう言うまでもないけどこれどう考えても薮プロデューサーですやんと。そうこじつけたいわけですよ私は。バレてるかもしれんけど書くの疲れてきた。wのであとは適当に感想など…。

  • 1幕は思ったより話に(まだw)整合性があってすっごい面白かった〜。虚実が入り混じって、どこからが劇中劇でどこからが本筋なのか分からなくなるところが面白い。引き込まれる。特に最後の赤穂浪士なんてド派手な演出も相まってものっすごい迫力だったー!メタ構造がどんどん入れ替わるところが楽しい。劇中劇の中で薮プロデューサーが死ぬ辺りなんか、劇中劇のドラマ性を現実(ジャニワ内のね。説明ややこしいw)が凌駕してしまうってのも二重三重に入り組んでて興奮した!あとこれの河合くんが死ぬほど!死ぬほどかっこいい!悪役最高すぎる!
  • で、それに対して2幕のヤバさな!wそもそも死後の世界(なのかも分からんけどもw)に山田くんをはじめとするJUMPがいて、セクゾンさん演じる天使がいて、えびさん演じる宇宙人?過去人?がいて、舞台が宇宙、っていう時点でもはやどこに己の焦点を定めて受け止めればいいのか全く分からんw今思い出してみても明確なことが何一つ思い出せないw そして山田くんが「人間は死んではいけないんだ!!」って高らかに主張し始めた辺りでひっくり返った。いきなりのカルト的発想すぎるwwww世界観がいきなりムーにwwwww主人公を山田くんとして見ていただけにあそこからの怒濤の流れは「おい!それは賛同しかねるぞ山田くん!!!」と思いながら見てました。最終的に地球に帰ってきてくれてよかったです(しょうもない感想)。また狂言回しのメインが戸塚さんなのがあかんwwwこわいwwww
  • 楽しみにしていたシェイクスピア10人10役!八乙女くんすっごい良かった、意外なほどに素晴らしかった!また彼の青年らしい体躯とか、シェイクスピア劇をやるにあたってしっくり来る明るい茶髪wとかが良い具合でねー。変幻自在に声色も変えて、ああこの人のストレートプレイも見てみたいなって思えた一幕でした。三者それぞれに魅力的なんだろうね〜あれは確かにコンプリート欲が出る。
  • 一応言及しておこう、北山出てた!というか北山の出る回に当たったwベストヒット歌謡祭からの移動&出演お疲れっす(昼のせんちゃんも)。「あ、この人…すごいジャニーズ…!」って感じられて嬉しかったな〜。かっこよかったよ。全く殺すわけじゃない、良い塩梅にクセを抑えてるように見えた。器用やな。

疲れたので他の諸々は思い出したら随時ついったーで書きます(投げた)。とりあえずこれが私のジャニーズワールドでした。先達の感想を見てある程度仮定を立てて観劇できてよかった、何の予備知識もなしに行ったら頭割れてまうwしかし2幕は色んな意味で予想外すぎてだな…さすが予想など裏切って斜め上を旋回し続けるジャニーズやわあ…といっそ感動すら覚えたものです。裸になればええってもんじゃない。がしかし裸になればなんかまぁ丸く収まるっしょ、よく分からんけど!ってとこがすごくジャニーズだなって…。だからもう、とにかく全部がジャニーズなんだよ良くも悪くも…w
あ、そうだそうだ山田くん。光一さん、滝沢さん、亀梨さんと歴代座長が受け継いできた悲劇の担い手の遺伝子!を!感じました!いやもうほんっと似合うね悲劇が!!!SHOCKは見たことないからアレなんだけど、滝沢さんの悲劇が血や権力由来、亀梨さんの悲劇が理不尽な偶然性由来なことを鑑みて、山田くんの悲劇は何由来かなぁと考えながら見た。私の推測としては「従順」ゆえの悲劇だと思います。もう数回見られるようならこの辺りを考えながら見るんだけど、私もう観劇予定ないからなー。感覚でしかないんだけど。ミステリーヴァージン買うよ…。